強迫性障害の全貌

強迫性障害の知識の普及 Link Free

強迫性障害と精神病

一昔前までは、強迫性障害(強迫症)は、強迫神経症という病名でした。

精神病というのは、主に統合失調症双極性障害で、それと比べ比較的軽い精神障害が、神経症(ノイローゼ)で、精神病は心の病気というよりは、脳に問題があり、神経症は脳には問題がなく、心の病気という考えもありました。

ところが、強迫性障害は自然に治ったりしませんし、頭の中の強迫観念の病気ですから、環境を変えただけでは治せませんし、重症であると日常生活や社会活動の著しい障害となり、統合失調症などの精神病と比べて、必ずしも軽いとは言えません。

精神病でも症状が軽い人も多いし、神経症でも症状の重い人は多いのですが、統合失調症双極性障害が他の精神障害と取り分けて扱われるのは、統合失調症の陽性症状(妄想や幻聴を伴う精神分裂状態での言動や行動)、双極性障害での躁状態(過活動の抑制が困難な状態など)が、社会性を失いやすく、故意でなくても他者に迷惑や危害を与える可能性が強いからです。
程度によっては、無理やり隔離して、薬で沈静化しないといけないし、重症でなくても必ず治療して、危険を防止しなければいけません。
そういう意味での重い精神障害なのです。

もし重症というのが、本人の内面での苦痛度や不自由度ということなら、神経症でも重い場合が多いのですが、症状により他者に危害を与える可能性が低い分、安全ではあるのです。
強迫性障害では人間的な理性が失われることはなく、内面的にパニックになっていても、人目を気にして、恥ずかしいと思うことができ、他人の前では自制的に振舞うこともできます。
重症の強迫性障害では、両価性思考などの精神病的な症状も重なりますが、それらは内面にとどまって表立つことは少ないのです。
ただ、そういった内向性での抑圧的な感情のエネルギーが、病んだ思いや強迫観念を自制できないほどに強めている面もあります。

精神病の場合、その症状で本人が著しい苦痛を感じているとは限らないし、本人が一般の人と比べておかしくなっていることを自覚していない場合が多いのですが、社会的な理由で、特に陽性症状や躁状態にならないように管理し治療を続けなければなりませんし、それがその人への援助になります。

そういう特徴があるので、精神病という言葉自体は、今後もしばらくは使われると思いますが、神経症という言葉には不適切なイメージが付いてしまったし、神経症の範囲にあった精神障害も、現代では脳にも問題があるようだということが分かり、神経症という言葉はなくなりつつあります。

昔の考えだと、薬が効かないのは、脳に問題がないからだとなりますが、現代では、そういう薬がまだ開発されていないからだと考えます。
強迫性障害の場合は、観念の病気であり、それは意識に含まれますから、セロトニンを増やす程度では、軽症でない限り何も変化しません。
有効な薬は、麻酔、麻薬、ハッピードラッグ系などの恐怖感をなくせる薬ですが、乱用の問題があり、あっても使えないものばかりで、もし使ったとしても一時的な効果に過ぎません。

ただ、SSRIは落ち込みなどの抑うつ症状に効きやすいし、睡眠障害などに効く薬はありますので、強迫症状にそれらが伴っているなら使ったほうが生活を改善しやすいかもしれません。