強迫性障害の全貌

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強迫性障害はなぜ治らないのか

以前、妄想は非現実で、強迫観念は現実と結び付いた思いと書きました。

「みんなが汚い」という妄想がある人の言う「みんな」とは、妄想の「みんな」なので、抗精神病薬で鎮静させて妄想を抑えれば、「汚い」もなくなります。
元々、「現実のみんな」への汚いという反応ではなかったので、妄想がなくなれば、現実への正常な反応が残るだけです。

「みんなが汚い」という強迫観念がある人の言う「みんな」とは、現実の「みんな」なので、抗精神病薬で鎮静させて強迫観念を抑えようも、現実のみんなは変わりませんので、その現実に反応し続け「汚い」もなくなりません。
現実を意識できないぐらい鎮静させないと、強迫観念も治まりません。
もし一時的にそうしても、現実が意識できるようになれば、過去の記憶も復活して、世の中にある危険で避けていた物事をまた思い出してしまうのと同じで、何に嫌悪するかなどの反応も再生され、以前から汚いと感じていた物事に「汚い」という思いが浮かびます。

ゆえに、トラウマ(現実の記憶)が原因で強迫観念が浮かぶ場合も、抗精神病薬では治し難いのですが、強迫観念が軽症であったり、実は妄想であったりした場合は、抗精神病薬が効きやすいはずです。

汚染恐怖の人が、なぜ汚れるのがそんなに苦痛かと言えば、本人の意志に関わらず、そういう強迫観念が浮かび続けるからです。
本人の考え方を変えようと、それに関わらず、現実に反応して、条件反射的に強迫観念が浮かんでしまうので、強迫行為で現実を変えるしかないのです。

強迫観念の内容が「かもしれない」という心配程度で、現実にはそうではないということであっても、そうなった時のショック体験への恐怖などが強いと、現実的ではないと分かっていても、そういう思いに関わらず、強迫観念は浮かんでしまいます。
現実的ではないと分かっている点が、妄想との違いですが、分かっているからといって、強迫観念(不安な思い)が消えてくれることはないので、強迫行為をせずにはいられなくなります。

強迫症では、多くの場合、強迫観念(不安な思い)があり得るように思えてしまうのですが、もしあり得ないと思い込んだり、その思いを放置するようにしても、そういう意志に関わらず、強迫観念は浮かび続けますから、その違和感や不快感が気になって、強迫行為をせずにはいられなくなります。

特に、汚れというのは、心配もありますが、現実に汚れてしまうことが多いので、なかなか治せないのです。


ですので、強迫観念を弱めるには、抗精神病薬ではなく、抗うつ薬(SSRI)で、抑うつ症状を改善して、ネガティヴ思考を弱めていくことが大事になります。
これには一人だと長い年月がかかりますので、ポジティヴになれる友達やパートナーと共に過ごす時間を取るようにするとか、好きなことに集中できるようにするとか、そういった生活改善が大事なことになり、それが難しいと、治すのも難しくなります。