強迫性障害の全貌

強迫性障害の知識の普及 Link Free

強迫性障害患者に対する適切な治療とは何か?

よくある説明で、適切な治療を受けることができれば治せると言うのですが、適切な治療は本当に可能なのかという話です。

宍倉久利江さんという方の研究データがありました。
強迫性障害患者に対する心理教育~
セルフケアなどに関する論文(PDFファイル)です。

具体的には二人の症例が出てくるのですが、一人目は汚染恐怖と洗浄強迫と汚染回避が主症状で、恐怖情報や不安刺激で汚染されるタイプです。

悪い言葉や悪い話、怖い映像、そういう恐怖心を煽られる情報を見聞きすると汚染されるのですが、トラウマ体験がきっかけになっていることが多く、PTSDでの回避と強迫症状が合併している病状になります。

このタイプの人は、テレビや新聞、雑誌などに拒絶反応が出るようになりますが、これは小さなことではありません。
もし1DKとかのマンションで人と同居していれば、自分だけテレビを見ないということは難しいし、病院などの待合室や職場の休憩室など、ほとんどの場合、テレビが垂れ流しで映されています。
電車の中などでも新聞、雑誌、雑誌広告などを見せ付けられることになりますから、一般社会の中で恐怖情報で汚染されないようにするのは大変困難なことですから、引き篭もりになります。

通常、情報汚染タイプの人は、全身が汚されて、洗浄したりしないといけなくなりますが、この患者さんの場合、手を洗うと落ち着くということなので、実際に手が汚れる感覚(イメージ)があるというよりは、強迫観念が落ち着くから手を洗うのだと思います。
ただ、良くない言葉を聞いて、その時汚染された物を捨てたりもしているので、汚れが強迫的イメージとして、物や体に付着する(関連付く)こともあるのではと思います。

もう一人は、頭部外傷後に発症したタイプで、強迫性障害でよく話が出てくるハワードヒューズという人もこのタイプだったはずです。
以前に、強迫行為にかかる時間などは経済状況や環境によって違うと書きましたが、ハワードヒューズのような大金持ちだと、強迫行為も豪快になりやすいのです。
逆に強迫行為にかけるお金がなくて、強迫行為の時間は短いけど、重症の患者というのもいますから、単に目に見える範囲だけで重症度というのは決められません。

この論文に、「難治性疾患と位置付けられていたが、 近年になって効果的な治療方法が確立され、回復可能な精神疾患として~」と書かれていますが、本当に効果的な治療方法が確立されているなら、なぜ治らない人が多いのでしょうか?

実際には強迫性障害の多様性により、どこまでの範囲が強迫性障害の治療と言えるのかあいまいになっています。

この論文に書いてある一人目の症例の人は、汚染恐怖がありますから、入院生活は向いてないのですが、無理やり入院させられたので、当然、そこでパニック状態になります。
SSRIはイライラを強めたので中止され、鎮静させるために、本来は強迫性障害の薬ではない、非定型抗精神病薬気分調整薬が使われることになります。
それらを使う時は、強迫性障害だと健康保険が通りませんから、保険を通すために、病名を統合失調症双極性障害としているわけですが、それでも治療するのは、強迫性障害なのです。

リスペリドン 5mg
ビペリデン 2mg
ブロマゼパム6mg
ニトラゼパム 10mg
バルプロ酸 200mg

この内容が、退院時の(1日分の)処方で、退院後は、眠気防止で、リスペリドン4mgに減ります。

患者は、不安感はあるものの、入院前には見ることができなかったテレビ、新聞、本などを避けずに見ることができるようになったそうです。
これは回避症状の大きな改善ですが、それらを楽しめるほどではないし、恐怖事で汚れる症状はあまり改善しなかったそうです。

それで、その後は行動療法を行い、やや改善したが、課題を残したまま終了。
その後は、SSRIを再開し、ブロマゼパムを4mgに減薬、不安を感じる場面が減り、強迫行為を我慢する意欲も沸いてきたという状態まで行きます。

退院時の薬をいつまで続けていたか不明なので、何が一番効いていたのか分かりませんが、ようするにやれることは全てやりました的な治療をしたわけです。
その後、どうなったのかも分かりませんので、治ったと言えるかは微妙ですが、改善は確かにしています。

まとめると、

強迫症状に、衝動性と情動不安定さが加わると、SSRIではコントロールできない。
非定型抗精神病薬気分調整薬は有効。

つまり、抗精神病薬気分調整薬を使うと、衝動性と情動不安定が軽減して、行動療法に取り組みやすくできる。

ある意味、当たり前ですが、そういうことらしいです。

近年になって効果的な治療方法が確立されというのは、よくある説明ですが、こういう全力治療のことを差すのであれば、とても保険適用でできる話ではありませんから、やや非現実的です。

そもそも、強迫症状に、衝動性と情動不安定が加わっているのは、普通のことではないですか?
軽症の人ならないかもしれませんが。

一般的な説明にあるような、適切な治療の薬には、少量の抗精神病薬気分調整薬も含まれているのではないかと思います。
でもなぜ、それらが強迫性障害に保険適用されないかというと、薬の治験では強迫性障害でも比較的単純な症状の軽症患者が使われるからです。
それらの人達を治すには、抗精神病薬気分調整薬は向いてないということになります。

強迫性障害に幅があって多様性もあるのに、その基本は軽症患者なので、いつまで経っても、そういうレベルの薬しかないということになります。

論文の二人目の頭部外傷後に発症したタイプにしても、頭部外傷で強迫症状が出ているわけなので、一般的な強迫性障害とは違う面があるはずです。
たとえば、このタイプの場合は、強迫行為を無理に止めても強い不安が生じ難いそうです。
それならば、抗精神病薬気分調整薬は必要なく行動療法にも取り組めるはずです。

そうやって、同じ強迫性障害でも、こういうタイプには、こういう薬で、こういう治療をということができればいいのですが、せっかくそういう研究をしたって、そこまではできませんよってなりますから、研究者も適応薬も少ないのです。
少なくとも保険適用内では、適切な治療はできない場合も多くあるというのが現実です。

それで、行動療法は本でも読んで自分でやりましょうという話なんですが、重症の人は、そういう本に書いてあるようなことを人生において既にしてきた人達なんです。

結果的に、軽症もしくはお金があれば、治せる可能性があるが、お金のない人とか、重症だと適切な治療はあっても受けられませんということになり、治す手立てがありません。


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