強迫性障害の全貌

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眠れない脳/考え事が止まらないのはなぜか?

前回は、自生思考と強迫観念は、ほとんど同じだと言う話でしたが、今回は、それをあえて分けることにして、自生思考が強迫的であれば、強迫観念として扱うことにします。

考え事が多い状態は一般の人にもあり得る事ですから、それは病的でないとすれば、病的な自生思考というのは、そんなことを考えている状況ではない時に、その状況に不適切な思考が自然と始まってしまう状態と考えられます。

自分の意に関わらず浮かぶ思考ですが、おそらく、自生思考には実際にはそれ程嫌ではない内容も多く、強迫性を感じないこともあるので、強迫観念と分けられているのではと思います。

つまり、強迫観念であれば、不快なことが多いので、少なくとも頭の中でその思いを振り払おうとしますが、自生思考は放置されることも多いので、長々と続いてしまうわけです。

自生思考には、何らかの思い考え、イメージ(表象)とか記憶の想起とかもありますが、その内、嫌な内容のことは、当然、強迫的に思えるし、不快なので、反射的に振り払い消そうとするのが強迫症状です。

良い内容の考えは、強迫的になりませんから、それを消そうとか、振り払おうともしません。自生思考でも内容的にそれ程嫌な考えでなければ、強迫観念にはならないわけです。
自生思考というのが、嫌な内容とは限らないと考えれば、自生思考の内で、強迫的に思える嫌な内容の思考が、強迫観念と考えられるわけです。

強迫症の人の脳内では、強迫観念とは限らなくても、いろんな考え事をし続けていたり、色んな記憶のシーンとか場合によっては、音楽の一部などが繰り返し再生され、それを止め難い状態になったりしますから、自生思考とも言える状態になっていて、いつも不安で落ち着きません。

強迫性障害の人には、自生思考もあれば、強迫観念もあるが、強迫観念の苦痛に比べれば、自生思考は放置できるレベルなので、強迫観念が浮かばない時は、あるがままになって、自然と、いつも長々となんらかのことを考えてしまうわけです。

強迫症は、強迫的な事に弱く、強迫観念が浮かびやすい病気で、その強迫観念は、一旦静めても、嫌な内容であるほど、また再生します。

強迫観念の反復性というのは、トラウマ記憶の反復性と同じなのですが、それが嫌で拒絶反応的に気になってしまい、どうしても気になってしまうことで、記憶から消えないどころか、再生されてしまうのです。
強迫観念とかトラウマというのは、不快な刺激、大きな違和感ですから、神経過敏とか感覚過敏で、些細な違和感、些細な刺激にも弱い人ほど、そうなりやすいのです。
もしくは、何らかのショック体験などで、精神的に強いダメージを受けて脆い状態になっていると、過剰警戒や過覚醒になり、些細な刺激に敏感に反応してしまうことになります。

それで強迫観念やトラウマ記憶は繰り返されるのですが、自生思考でも嫌な内容であれば、強迫観念のようになり繰り返されやすいのです。

ただ、強迫症の自生思考と、躁状態での観念奔逸はまったく違うのではないかと考えています。

強迫症の人は、何も考えてないと強迫観念が浮かんでしまうという恐怖感があるので、いろんなことを考えて、強迫観念が浮かばないようにしている。
つまり、強迫行為として防御的に自生思考のような状態になってしまうということです。
そういう考え事と言うのは、おそらく止めようと思えば、止められるはずですが、止めると強迫観念が浮かんでしまうので、また他のことを考え始めてしまうのです。
これも意識的にではなく、自然とそうなってしまうのですが、回避的な過剰思考ですから、少なくとも躁状態での観念奔逸とは違う状態です。

強迫症では、強迫観念が浮かばないように、強迫行為として考え事をしてしまうということであれば、強迫観念への抵抗が強い人ほど、頭の中が考え事でいっぱいになりますが、それを止めるのも怖くなります。
強迫症状で考え続けてしまうのですから、そういう思考を抗精神病薬で鎮静させても、現実を意識できる限り、その現実と結び付いた強迫観念は残ってしまいます。

精神症状で社会的に危険性の強いのは、幻覚、妄想状態と考えられています。
それらは基本的に、自分の内側のことではなく、自分の外側の現実で起こっているように思える状態ですが、実際には非現実なので、薬で脳内を鎮静させれば、現実側には問題が残りません。
全てが脳内だけの問題であれば、医学的に治しやすいのです。

統合失調症の自生思考というのは、弱い妄想状態なのではと考えています。
つまり、自生思考が自分の考えであるという意識が弱く、もう少し自分とは離れた思考のように感じられるのではと思います。
強迫症の自生思考が自分の内側にあるとすれば、統合失調症の自生思考は自分の内外の境界ぐらいにあるのでは。
それゆえに、本来的には不快な内容であっても、それを振り払う(否定する)ということができにくく、受け入れてしまうことで、自生思考が暴走しやくなってしまう。とも考えられます。

強迫症の人の場合、基本的に精神症状が自分の内側からは出ません。
強迫症でも人によっては、幻覚、妄想のような状態も自分の内側にはあるのですが、内側にあるのだから、それは自分の思いであり、現実ではないと認識するのです。
その点で、社会的な危険性は少ないのですが、内側と外側の差があり過ぎると、社会性、社会適応力は低下します。

強迫症での幻覚のような状態というのは、強迫的に浮かんでくるイメージのことです。自分でイメージしているわけではないけど、いろんなイメージが次々と現実と重なって浮かびます。
これが睡眠の前後などの目を閉じた状態だと、かなりリアルに現れることにもなります。
真性の幻覚のようにはっきりと自分の外側に感じられるわけではないが、イメージが現実と重なって、淡い幻覚のように浮かぶことになります。
この強迫幻覚(表象幻覚)状態にある人は、強迫観念の内容もイメージであることが多く、強迫妄想症のような病状になります。
妄想のような状態というのも、非現実的な内容の考えやイメージなどで、現実的な強迫観念とは違い、それほど嫌ではない内容も多いので、長々と考え続けてしまうこともあります。

統合失調症でも強迫症状が出るというのは、余程の陽性症状でなければ、嫌なことを避けるという反応が普通にできるからだと思います。
嫌な思いが自己の内から出てしまうと、その思いと現実が同化するので、現実と同じように扱ってしまいます。
振り払うという強迫症状にならない代わりに、自生思考が妄想化して、陽性症状が悪化するわけです。

従って、強迫症に近い統合失調症の人もいれば、統合失調症に近い強迫症の人も多く、統合失調症の症状が目立ってなくても、本人の生活状況や病状によっては、本当は強迫症であっても、薬が保険に通るように、統合失調症として治療を受ける場合もあります。
強迫症抗精神病薬が効きやすいのは、重症の人よりも、むしろ軽症の人であり、強迫観念と現実との結び付きが弱く、思い込みの強い人であったり、恐怖症や不安症に近いタイプの人です。
SSRIよりも鎮静力の強い少量の抗精神病薬で恐怖感や不安を軽く抑えれば良いのです。
ただ、統合失調症強迫症が合わさった病状だと、普通の統合失調症よりも、抗精神病薬が効きにくい事は考えられます。

重症の人は、基本的にもう不可逆ですから、ある程度のことはあきらめて、悪化を防ぐための長期的治療になりますので、SSRIのほうが安全で向いています。
おそらく、強い恐怖感が完全に吹き飛ぶようなハッピードラッグ系であれば、効いている間は楽になれると思いますが、反動での落ち込みも強いし、正常な恐怖感や不安も感じなくなったら、それはそれで問題が起こります。
それ以前に、医療用の薬として販売されるとしても、入院期間だけとかの条件が付いて、日常生活では使えないはずです。

強迫症の人は、強迫観念としての考え事、過去現在の嫌なことの想起、危険回避や対策の構想、物事の下調べ、準備といったことも考えないといけないので、頭の中は活発になり、寝付きが悪くなります。

脳機能的な異常の少ない人なら、自然と眠れますが、強迫症統合失調症躁状態のように、思考に障害が出ている人は、自分の意に関わらず脳が活動して、うまく睡眠が取れません。
これはよく眠れる薬でなんとかするのが良いです。


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