強迫性障害の全貌

強迫性障害の知識の普及 Link Free

強迫性障害の治療は生活を支えるためにある

強迫症の場合、治し難いからこそ、まずは、治療可能な状態に向かうための治療を受けることになります。
いきなり治すというよりも、その前に、ストレスの少ない生活ができるように環境調整をして、悪化を防ぎ、少しでも人間らしい生活ができるようにすることが大事です。
それをしやすくすることが、強迫性障害の治療なのです。
薬がないと治療さえできませんから、あまり効果が得られないとしても、治療の象徴として薬があることで、患者として社会の輪に入ることができ、治療可能な状態に向かうための治療が可能になります。

一般的な説明に書かれている治療法は、そういう治療である程度まで治った人とか、もしくは、最初から治療可能な病状の人向けです。
本当に病気範囲の強迫症の人は、そこまで程遠くて、一生かかってもそこまで行けない人も多いのですから、非現実的な治療法になります。
もしそれを受ければ、治るどころか、それがストレスになって、悪化してしまうのです。

強迫性障害の人は、過敏でストレスに弱く、ストレスをブロックできないので、ストレスに曝されやすくなります。
現実のストレスで、不安、恐怖、嫌悪などを感じやすく、不安症や恐怖症にもなりやすいのですが、過敏であることで、不安、恐怖、嫌悪などを人一倍強く感じて、それがうまく処理できずに、それらが強迫観念化して長々と強く残り続けます。
現実のストレスだけでなく、不安、恐怖、嫌悪などの感情自体とか、それと結び付いている思考(強迫観念)自体からも、繰り返しダメージを受けます。
強迫観念のショックやダメージで、強迫観念が浮かび、そのダメージを受けて、また強迫観念が浮かびという感じで、反復的持続的にストレスが続きます。

強迫観念を解消しようと何らかの強迫行為をしても、過敏性により、不安、恐怖、嫌悪などを感じやすいので、どうしても強迫観念が残ってしまい、強迫観念が静まるまで強迫行為をすることになります。

強迫観念の観念という言葉にこだわり過ぎると、強迫性障害を理解できません。
それだけではなく、様々なことに強迫されるからです。

強迫観念は、一般的な説明では、「かもしれない」という、ありもしないことへの心配とか不安として書かれていますが、実際に起こっている不快なことでも強迫観念は浮かぶし、実際に起こった不快なこと(トラウマ記憶)も強迫観念になります。
「かもしれない」という不安な思いが浮かびやすいのは、確かですが、それは不安症でも起こることで、強迫症はそれだけではないのです。

強迫観念とかネガティヴ思考、不安、恐怖思考などが浮かんでしまうことは、強迫性障害でなくても起こりますが、強迫性障害であると、それが慢性的に続き、過敏であることで、日常の現実的ストレスへの拒絶反応的な強迫観念が浮かびやすく、それが表象幻覚にもなります。

不快な考えとかイメージが強迫観念となって離れなくなってしまうのですが、それは頭の中から離れないというだけでなく、その考えとかイメージが、自分の外側にも現実と重なってあるので、その強迫観念とそれと結び付いている現実を対処するために、強迫行為をしないといけなくなります。

イメージに現実反応して現実的に扱う状態が、表象幻覚ですが、形ある具体的なイメージだけではなく、シーン、情景だったり、ぼんやりとした感覚的なイメージだったり、感情だったり、記憶の想起とか残像だったり、未来的な不安だったり、あるいは、「汚れている」などの考え自体、それらが現実と重なって強迫的に思い浮かんで、現実と結び付いて(現実に付着して)なかなか離れない状態になります。
漫画のように頭の中の考えが現実世界に出て表面化しているのですが、それは本人にしか分かりません。
思考ですから、頭の中にあるのですが、現実に反応して、イメージ化しているので、現実側にも表れるのです。

そういう強迫観念は、現実と結び付いていますから、頭の中だけの強迫行為では解消できません。
その考えを除去するには、現実行動をしないといけないのです。

例えば(本人にとって)汚い物に近付いてしまい、全身とかその周辺一帯にその汚れが付着してしまったりする。
そういうのも表象幻覚ですが、頭の中で妄想的思考(考えに現実反応して現実的に扱う)状態になり、その思考の産物としてのイメージが表象幻覚になります。
「この部分が汚い」という考えが頭から離れない場合、その不快な考えが離れないことが強迫状態なのですが、その考え自体が、表象幻覚となって頭の中から飛び出して、現実のその部分に付着してしまいますから、頭の中からその考えが離れないと同時に、現実からその考えが離れない状態になり、その考え除去するには、頭の中だけの強迫行為ではできません。
現実に付着しているのですから、現実行動の強迫行為をして除去しないといけなくなります。

自分の意志で思い浮かべたイメージは、それが(現実と関係のない)ただの空想であれば自由にできますから、それを頭の中だけでコントロールするのは簡単です。

表象幻覚自体は、例えば、テニスボールをイメージして、それをラケットで打つ時のイメージ状態と変わりませんが、それは自発的イメージであって、強迫観念ではないので、そのイメージは自由にできるし、消すことも簡単です。

現実の何かのイメージであっても、それが良い内容とか不快なことでなければ、現実を変えなくてもいいし、強迫観念にはなりません。
例えば、食事中にテニスボールのイメージが飛んできても、通常それに現実反応してラケットで打たないといけないとか、そういうことにはなりません。
あっても気にならないイメージなので、自然と消えます。

思いたくも考えたくもないことが思い浮かんでしまうのが強迫観念です。
強迫観念のイメージは、危害を感じる不快な内容で、現実の何かの(何かへの)拒絶反応的イメージですから、自発的な空想とは違います。
現実と結び付いていますから、コントロールするには現実を変えないといけませんし、不快感が結び付いていますから、気にしない(現実を変えない)ことはどうしてもできませんから、強迫行為が起こるのです。

現実にはありえない強迫観念であれば、頭の中でそれを振り払うだけで済みますが、現実反応の思考ですから、ありえるようにも思えて、なかなか振り払えません。
それが現実にありえるように思える場合は、回避的な強迫行為が起こります。
まったくありえない事でも、強迫行為が起こるのは、ありえないと思っていても、強迫観念としてのありえるという思いは、現実の何かへの不安や恐怖などですから、ありえない事でも強迫観念自体が不快なので、それと結び付いている現実を変えようとするのです。

現実には起こらないことでも、その強迫観念自体は実際にあるし実際に不快です。
そしてその現実反応は頭の中だけの妄想ではなく、現実反応の思考ですから、その強迫観念を引き起こす現実を対処しないと、強迫観念は消えません。

強迫観念の不安な思いを消すには、それを思い浮かばせる現実を変えないといけませんが、問題は、過敏な人は不快な思考自体にも過敏に反応し続けるので、強迫行為をしても強迫観念が残り続けてしまうことです。

例えば、「確認した」と思っていても、強迫観念がある限り、何度も確認しないといけなくなります。
確認することで、強迫観念が残るということは、その強迫観念を引き起こす現実状況が解消されていないことになり、また強迫行為をしないといけなくなります。
神経過敏症状ですから、頭でどう考えるかに関係なく、強迫観念は浮かび続けます。
頭で「確認した」と分かっていても、強迫観念があると、また確認しないといけなくなります。
完璧を求めているのではなく、強迫観念が残るからそうするのです。

強迫性障害は、基本的には、神経過敏に悩まされる病気です。

神経過敏と言っても、神経質な性格による過敏、妄想状態での大げさな反応、自閉状態での簡単な刺激への過集中で起こるオーバーアクション、それらは実際には神経過敏ではありません。

強迫性障害は、性格、妄想、自閉とは無関係で、実際に神経過敏なのです。

神経質な性格だと思っている人の中にも、実際に神経過敏な人が含まれていますが、実際に神経過敏な人は、性格とか考え方の問題ではないので、森田療法認知行動療法では治せません。

神経過敏な人は、現実のストレス反応で、不安、恐怖、嫌悪する思いが浮かびやすく、その思いとか感情自体にも過敏反応しますから、その思考と感情が強迫観念となって長く続いてしまいます。
その現実のストレスとか、強迫観念のストレスを解消しようと強迫行為をします。

ストレス回避というのもエネルギーを使うストレスのかかることです。
過敏な人は、不快な思いをしないように、予防的に強迫行為をすることも多くなりますが、強迫行為もストレスになりますから、ストレスに弱い人は、それを求めず、そうしなければならない状況を避けたり、防いだりといった回避行動が過剰になります。
ストレスに弱いと、回避行動もストレスになりますので、不活発になりますが、特に何もしななくても頭の中の強迫観念などがストレスになったり、日常の些細なことがストレスになりますので、気が休まりません。
このタイプは、強迫観念主体で、強迫行為はできればしたくないし、回避などもできればしたくないのですが、現実のストレスや強迫観念に弱くて、そうしたくないのにしないといけなくなってしまうので、苦痛が強いのです。

こだわりにとらわれやすい人(完璧主義的な人)、欲求的な思いにとらわれやすい人(依存症的な人)は、そういう思いに敏感であることで、それにとらわれやすいという面があるのですが、過敏で不快感に弱くて、こだわらないといけなくなったり、安心感などを求めてしまう人とは違い、むしろストレスに強い人も多いのです。

やりたくもないのに嫌々やっている行為は、何らかの動機があって、それが原因で止めたいが止まらない状態なので、その動機が解消しないと、止めるのは困難です。
求めてやっている行為は、それを求めていること自体が動機であり、求めていることを止めれば、動機も解消するのです。

ある程度敏感な強迫観念主体型でもストレスに強い人は、強迫観念が先行しているが、その強迫観念を解消するための強迫行為を求める気持ちが強くなり、強迫行為も過剰になりやすく、これが混合型です。
敏感ですが、それ程、ストレスに弱いわけではありません。

不安の強い人が妄想的になりやすいのは、強迫観念よりも、あれができる、これができるという願望のほうで、それができない現実は不安になりますから、その不安な思い、イメージを頭の中で振り払ってしまうことで、普通の願望ではなく、強迫行為としての願望、強迫的願望になります。
これは不安が強いほど、誇大妄想に近くなり、実際にはありえないレベルで、できないことが多いのですが、できないという現実を直視できずに、できるように思えてしまうのです。
それが願望強迫で、基本的には強迫観念主体型の症状です。
これは意外と人生を悪くする危険な症状なので、不安を抑えるために、妄想的な願望にとらわれていないか注意してください。

不安が強いわけではないが、欲求的願望を満たそうとするのは、依存症的な強迫的願望ですから、強迫行為主体型です。
その欲求が満たせないと、強迫観念のような不快な思い、不満が強まりますが、それは自然なことであり、本来的な強迫観念とは違うものです。

強迫性障害のタイプ分けは、病院ではできませんので、患者が自分ですることになります。
他人には分かり難いことなので、自分がどう思うかで決めれば良いのです。
タイプ分けできれば、どういう治し方が向いているかとか、治し難い、治しやすいなどの予後が分かります。

強迫観念主体型でトラウマが強迫観念化していたり、汚染恐怖による接触拒絶があると重症化しやすいです。

統合失調症ならば、抗精神病薬で治せますが、現実反応の強迫症には効きません。
現実逃避的な精神障害の代表が統合失調症ですから、統合失調症強迫症に対して治療的です。

統合失調症はストレスがきっかけで発症する人と、ストレスに関係なく発症する人がいますが、どちらにしてもストレスで再発しやすいとされています。
ストレス回避的な症状ですから、特にストレスで発症したタイプは、それを治してしまうと、またストレスに弱くなってしまうのです。

統合失調症はそうなりやすい脳の人が発症するとされていますから、統合失調症強迫症に対して治療的だとしても、統合失調症を治すと強迫症になってしまうのではなく、統合失調症を治すとまた統合失調症になって、その統合失調症強迫症を防ぐので、統合失調症を治しても強迫症にはならないのです。

ただし、中途半端に統合失調症を治してしまうと、元々からストレスに弱いタイプの人は、中途半端に強迫症にもなって、統合失調症でありながら軽度の強迫症状も出てしまいます。
統合失調症を発症する前とか、統合失調症が治っていく段階で、強迫症状が出ることはよくあることで、非現実だと分かっているが、それにとらわれて、強迫行為をする人の中には、二重見当識での妄想状態に近い人もいます。
しかし、統合失調症強迫症に対して治療的症状ですから、統合失調症になっている人(そういうタイプの脳の人)は、少なくとも重度の強迫症にはならないのです。

強迫症の人は、統合失調症にならない脳なので、強迫症なのですから、重度の強迫症の人ほど、統合失調症になりにく、そうであるから強固な現実検討力があり、現実逃避的になれないことで、その分、現実のストレスを受けやすく、それに対する拒絶反応として強迫観念が浮かびやすいのです。
それに治療的なのが、統合失調症ですから、自然と統合失調症のような精神状態にはなっていき、現実逃避しようとしたり引き篭もって自閉的にはなりますが、統合失調症にならない脳なのですから、妄想状態や自閉、陰性症状も起こらずに、現実逃避ができないことで、慢性的に現実のストレスに曝され、その拒絶反応で、強迫観念が強烈に病んだ内容になり、それが表象幻覚や妄想的思考の形で表れ続けます。
強迫観念や病んだ思考自体に対しても反射的に強迫観念が浮かび、それが消えないことで悩まされ続け、ストレスへの拒絶や回避も過剰になり、人間的な生活が困難になります。

思考が妄想的にはなっても、それは現実の何かの思考とか現実の何かに対する思考なので、現実から切り離された非現実の思考(妄想)ではないからこそ、薬では治せません。
神経過敏であるから、一般的ではない思考内容になっているのですが、それは本人には実際に現実のことなのですから、他人が説得をしても、現実反応の思考を非現実として処理することはできません。

神経過敏による強迫症状を、認知行動療法で治せないのは当然のことです。
認知行動療法で治らないなら、診断を見直すという考えは間違いで、患者のせいにするのではなく、強迫症を正しく理解して、療法を見直すべきなのです。

脳機能的な研究もされていますが、薬と同じで、実用できません。
あったほうがいい不安とか恐怖まで抑えられると、別の問題が起こります。
例えば、自殺願望は強迫観念ではなく、頭の中での仮の強迫行為ですが、強迫症だと、自殺願望があっても、自殺恐怖の強迫観念も強いので、その葛藤で悩むことになります。
早く終わらせないと思いながらも、そうなってはいけないと、危害回避的になり、苦しみながらも生きようとします。
それで防げることもあるのですが、あったほうがいい不安とか恐怖まで抑えられると防げなくなります。
不安とか恐怖などは、調節が困難なのです。
そういう治療があっても汚染恐怖で診察台や検査器具、治療器具などへの接触拒絶があると治療が受けられません。

精神の薬はあんまり種類がないので、強迫性障害患者に、その中から何かということであれば、SSRIが適切です。
抗うつ薬なので、うつにはある程度効くし、治療するには保険適用薬が何かないといけません。
双極性障害の場合、SSRIだと鬱が躁転するから、専用の薬があるのですが、過剰行動と言っても、危害回避行為が過剰な強迫症にはSSRIで問題なしという考えです。
SSRIは強迫には多くしても効きませんので、飲むとしても少量で良いです。
寝付きの悪い人は、少量の睡眠薬抗不安薬も向いています。

そうしながら、人間らしい生活をできるようにしていくのです。


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