強迫性障害の全貌

強迫性障害の知識の普及 Link Free

生まれながらの強迫症/感覚過敏と強迫観念

妄想や幻覚があってもまともに思考できる人であれば、異常になったことを理解できるため、相当な恐怖でしょうから、助けを求めたり、病院に行こうとすると思います。
統合失調症では思考が解体して、変な世界が普通のことになってしまい、自発的にそれを治そうとは思えません。

例えば変な夢を見ても、その時は眠って現実的思考ではなくなっているので、変なままその世界がしばらく続いてしまいます。
陽性症状が強い時期は、おそらくそれに近い状態ではないでしょうか。

幻覚というのは、睡眠前後の寝ぼけた状態であれば、普通の一般の人にも起こります。
入眠時幻覚、出眠時幻覚とか入眠時レム睡眠などと言います。
疲れている時などに多いようですが、まだちゃんと寝てなくても夢を見聞きしてしまうわけです。
その場合の幻聴は、外から聞こえる感じではなく、脳内で聞こえる感じで、はっきりとは聞き取れず、何を言っているかわからないとか、それ程気にならない短い内容だと思います。
睡眠前後であれば、問題のない幻聴です。
しっかりと目覚めている時に(幻覚剤などをやってなくても)それが起こるのが精神病です。

統合失調症での幻覚のほとんどは幻聴です。
例えば、鉛筆が何か怖いことを話しかけてくる時に、鉛筆そのものは口を開いたりせず、普通の鉛筆なのですが、そこから声が聞こえてくるので、鉛筆が話しているように思えるのです。

寝ぼけ程度でも幻覚が起こるので、妄想幻覚状態は、考えられているよりは、脳機能的にはそれ程複雑な障害になっていないのかもしれません。
しかし、陽性症状が強い時期は、興奮しやすいことを考えると、おそらくレム睡眠状態とは違い、逆に物凄く覚醒されているはずで、夢が妄想幻覚として表れるわけではないと考えています。
妄想幻覚が睡眠障害程度の症状であれば、とっくに研究されているはずです。

うつ病統合失調症では妄想となっていることが、強迫性障害では妄想的思考(一般的には考えないような内容の思考)になります。
強迫症であると危険回避が過剰になり、ネガティブな感情や思考、狂気などは自身の内側に向かいます。
気が狂いそうになっても、発狂しませんので、統合失調症で見られるような狂人のような言動は起こりませんが、内面の思考世界では、慢性的にそれが行われます。

強迫症のみんなが内面に発狂しているのではなく、症状で攻撃的な感情や思考、狂気などは内面に抑えられやすくなっているので、何らかのストレスが続いて、発狂しそうになった時に、そうなってしまう人もいるという感じです。

強迫観念、それ自体はほとんど妄想的に、そうであるかのように考えたり思ったり、幻覚のように見えたり感覚的に感じたりします。
しかし、強迫性障害の人の場合、正常な思考もできますから、それが自分だけの思考、自分の内にあるイメージであることは把握できるため、妄想幻覚状態とは区別できます。

妄想というのは、非現実的な思いなのに、それを確信し否定しない状態であると言われますが、この否定するという意味は、それを自分の思考だと気付くことも含まれます。
ですから、幻覚妄想状態の強い時には、強迫症状は起こりません。
特殊な精神症状で、幻覚妄想状態でありながら、強迫症状も出るということもなくはないかもしれませんが、明らかに狂っているのに、まともにも見える。というふうになりますから、いるとしてもそんなにはいないはずです。

幻覚妄想状態といっても、それを表現する能力が無い人にはその症状は出ません。というか出せません。

仮に寝たきりの人が発狂しても、狂人のような言動は起こりません。
本人の頭の中では、異常な思考で苦しんでいるかもしれませんが、言動に表す能力がなければ、精神病(陽性症状や躁状態)になっていても周りの人は分かりません。

強迫症強迫症状で狂気が抑えられ、内面世界が気が狂ったようになっても、それよりも正気や理性などが強くなれば、狂人には見えません。
思考面が妄想的になったり、感覚も異常になりますが、表向きはほとんど分かりません。
強迫症状の人の内面症状は、話さなければ、誰にも分かりません。
多くの場合、話し難いことが多いので、話しませんから、あまり知られていません。

強迫症の人の場合、強迫症状と結び付いた自我が維持され、同じ自分で同じ記憶が継続しますから、解離も起こりません。
ストレス回避での現実逃避の傾向はありますが、空想の世界に入り込むことはありません。
そのため表象幻覚状態になっても、それが現実のようにはっきりと見えるわけではありません。
現実を正常に把握しつつという感じですから、当然、それがイメージであることは分かっているので、普通のイメージのように見えるだけですが、それを現実と同じレベルで扱ってしまう(反応してしまう)という感じです。
ただし、それが強迫観念として浮かぶ場合だけであり、突飛であり得ないようなイメージは、妄想(非現実)として認識するためそんなに気になりません。

イメージの形で強迫観念が浮かぶ時は、表象幻覚状態になり、それは本人にとっては現実と同じレベルで気にしないわけにも行かないのです。
その上、恐怖や嫌悪を伴う内容が多く、現実の嫌なことと同じレベルで、非常に気になりますから、強迫行為で解消しようとするのです。


強迫性障害の軽い症状(ちょっとした違和感を気にしてやり直す、バランスを気にするなど)であれば、幼少期から見られることもあるそうです。
ただ、子供はそれを変だとか過剰だとか気付きませんから、親などがそれを変だと思わなければ、普通の日常になります。
多くの場合は、強迫症状としてはっきり出ると言うよりは、ストレス耐性が低いことで、泣きやすかったり、幼稚園や保育園を嫌がったりといった弱々しさとして見られるかもしれません。
しかしその時点でもう嫌なことを忘れ難いとか、繰り返し考えてしまうとかの強迫観念はあるのです。

ちなみに、強迫症的なバランスを気にするというのは、些細な違和感が気になってしまうということで、その人にとっての全体的なバランス(しっくり来る感じ)を気にするのであって、シンメトリーだけではなく、アシンメトリーがしっくりするという場合もあるのです。
これは病的レベルでなければ、デザインとかスタイリングとかそういったことに役立たせる可能性もあります。

この違和感(強迫感覚)の副産物で強迫観念がありますので、例えば、シンメトリーにこだわる人の場合、そうでないと良からぬ強迫観念(妄想的思考)が浮かび不安になり、安心できる状態を維持しようとシンメトリーにこだわってしまうのです。
これは、ほとんど役に立ちません。

幼少期からそういうシンメトリー強迫みたいな症状のあった子が、その後、汚染恐怖などのいろいろな症状が出て、親にも誰にも触れないほど重症になって、いろんな薬や治療を試したそうです。
どれも治せなかったので、最後には、脳深部刺激療法を受けたら、かなりの改善があったそうです。
つまり脳を直接的に制御すれば、強迫性障害の症状もある程度抑えられるのですが、それには、正常な不安や恐怖、警戒心なども抑えてしまう欠点がありました。
それでどうなったかは、過去記事に書きましたのでここには書きませんが悲しい結末になりました。

多かれ少なかれ強迫性障害の症状には脳が関係しているのは確かですが、脳機能だけ正せばいいとかそういう病気でもないのではと思います。

みんながみんな同じぐらい脳機能に障害があるとかではなく、それぞれの程度や状態があって、ほぼ脳機能に問題なく性格や思考の癖とかで症状が出る人も全体の何割かはいるのではと思います。

強迫性障害もタイプわけをして、それぞれに合った治療をするべきで、少なくとも強迫行為主体型なのか、強迫観念主体型なのか、もしくは混合型かの区別をするべきです。

強迫行為主体型には、完璧主義型の人とか、強迫行為依存症的な人です。
強迫観念的な思いはありますが、それよりも先にそれ以上に、「こうでありたい」「こうしなければならない」というような願望が優先しているタイプで、強迫性パーソナリティ障害に近い人も含まれます。

多くの強迫症の人は、一般の人よりも過剰に完璧を求めているわけではありません。

完璧主義だから、強迫観念と現実の嫌なことに耐えられないということはなく、完璧主義の人は「こうでありたい」「こうしなければならない」という気持ちが強く、その状態にしないと不快になってしまうので、強迫行為をするのです。
「こうでありたい」「こうしなければならない」という思考が先に強くあって、ある意味、自分の意志のままに強迫行為をしたくてしているのです。
それができないから、不快、不安になってしまうというのは、本当は強迫観念ではないのです。

強迫観念主体型の強迫観念は、自分の意に関係なく(つまり主義的な思いにも関係なく)浮かびます。
単にその強迫観念と現実の嫌なことに耐えられずに、ストレスを解消しようと強迫行為をしているだけです。
ストレスに弱いから、ストレスを回避しようとするだけで、感覚過敏やストレス耐性が低いことは関係していますが、それ以外に特に深い意味はないのです。

PTSDでもトラウマを想起することを過剰に避けるという強迫症状が出ますが、現実的な強迫観念からの回避と、トラウマ回避はほとんど同じことです。
実際にトラウマが原因の強迫観念も多いし、トラウマ想起が強迫観念になっていることも多くあります。
現実と結び付いた強迫観念やトラウマ記憶は、過去と言うよりは今のことで、その現実の苦痛に訓練で慣らせることはできません。

強迫性障害は強迫的なことに弱く、強迫観念が浮かびやすい病気です。
その強迫観念は、自分の心掛けや思考に関係なく浮かぶ性質があります。
心理的にこういうことが起こって、強迫症状が出るという話は、いくらでも考えられますが、本人の意に関係なく出る症状ですから、どう思って、どうこうすれば治るという病気ではないのです。
それができない症状(心掛けでは治せない病気)なのです。

かと言って、薬も効く人が少ないのです。
抗精神病薬は発狂しないと効きませんので、発狂を抑制する強迫性障害には、今のところ、抗うつ薬であるSSRIが一番向いているということになります。過剰認知を抑える力があるからです。
治らなくてもせめて悪化しないように治療をするべきです。

強迫観念主体型の場合、感覚異常の問題もあり、重度であると治せる見込みはありません。
一般の人とは違う敏感な感覚があり、感受性が異常に強くなっています。
感覚過敏、神経過敏などとも言われる状態です。

その過敏性が思考を妄想的レベルにしたり、善悪などの社会的判断をあいまいにして、苦痛かどうか、嫌かどうかで、何が悪いかが決まります。
社会的に、一般的に、他人にとって、といったことは関係なく、自身の感覚が何よりも先に物事を判断するわけです。
社会的に、一般的に、他人にとってはどうなのかも理解できる点で、統合失調症とは違いますが、精神病に近くなります。

強迫性障害であると、思考が複雑なり、ある意味、分離、分裂するのですが、それをまとめてしまうのが強迫症状です。
ですので、複雑な過剰思考があって考え事が止まらなくても、言うことは理性的でまともなのです。

思考に障害が出るのは、感覚過敏による過剰認識です。

感覚過敏と言っても、聴力などが物凄く良いとかではなく、感覚器官自体の能力は普通レベルであっても、物凄い過剰な反応をしてしまうということです。

これは神経過敏とも言えますが、感覚障害があると、視覚、聴覚、触覚といった感覚の区別があいまいになります。

写真、文字、言葉、映像、そういったことで、普通の人は物質的に汚れません。
あれは写真であって、現実ではないから、言葉は付着したりしない、という感じで認識することができるからです。

神経過敏な人は、感覚器からの刺激が体性感覚(皮膚感覚、深部感覚)に伝わりやすいので、汚れの視覚情報などを体全体で受け取って、特に肌で感じてしまう、と全身が汚れてしまいます。
全身が汚れるから、身に付けている物も汚れを感じ、その汚れの周辺も汚染区域になります。
この汚れは表象幻覚なので、他の人には分かりません。

強迫症は精神の病気ですが、体質でもあり、脳を含めて体全体が強迫症なのです。
1つの刺激に全ての感覚が使われ体全体で受け取ってしまいます。
ですので、その傾向がある人は、嫌悪感の強い物事を見る(近付いた)だけでも汚れて、強迫観念にも体全体が反応して、強迫行為をしないといけなくなります。

強迫性障害は神経過敏症といってもいいのですが、神経過敏自体は精神の障害とは言えません。
気質とか体質的なことです。それにより、強迫症状(強迫観念が浮かびやすいとか、強迫行為を繰り返す)と言う精神異常が起こるのです。

ノイローゼは日本語では神経症ですが、昔は神経衰弱などという言葉があったように、神経が過敏になったりどうになかって精神症状がでる状態を指した言葉なのかもしれません。
病気は気の病という意味になりますが、おそらくその「気」の通り道が神経のように考えられていたのではと思うのです。
そんな気がする、というのは、そう思える、という意味ですから、「気」とか「思い」というのは、おそらく脳ではなく、心の産物と考えられていて、そういう意味での心の病が神経症だったはずです。

ただ実際には脳には神経回路があって、それがなかったら、正常な思考などもできないはずで、神経過敏は脳の障害とも考えられます。
個人的には病的性格の病気と考えられているパーソナリティ障害なども本当は、そういう性格になりやすい脳だから、そういう性格になったのではと考えています。
おそらく同じような環境で育っても、違う親から生まれた違う脳の子供であれば、性格面に違いは出てくるはずです。

発達障害のAD/HDは、子供の頃からなので、性格と言うよりは、脳の問題だと考えられていますが、そういう病気が作られる前は、そういう性格の子というだけだったのです。
しかし、それを正常に発達していないからと考え方を変えて見るだけで、病気になり、発達障害になります。
であれば、人格の病気であるパーソナリティ障害も脳の機能障害と考えてもおかしくはありません。

脳機能に本当にはっきりした障害があるわけではなくても、脳が性格や人格、思考や精神に無関係とは考えられません。
ある精神障害になりやすいのは、それになりやすい脳であったからで、それプラス環境的なストレスなどが重なり、その病気を発症すると考えます。
ただ、それになりやすい脳にも、レベルやタイプがあって、生まれつきすごくその病気になりやすい脳の人は、環境やストレスに関係なく発症することもあるということです。

性格や考え方の癖が原因になっていたり、強迫観念の恐怖などが現実的ではない人などは、認知行動療法などが効くこともありますが、多くの場合は、性格や考え方の癖で症状が出ているわけではありませんし、強迫観念は現実の恐怖などとしっかりと結び付いています。

どちらかというと、強迫症だから、そういう性格でそういう物の考え方をしてしまうという感じです。
例えば、強迫症では内向的になりますが、内向的だから強迫症なのではなく、強迫症、または強迫症になりやすい脳だから内向的になっているのです。
その性格や思考を正すには、先に強迫症という病気を治さないとできません。
患者はただ病気になっているから、そうなってしまうので、患者の性格や考え方が悪いわけではありません。

精神分析というのがありますが、昔、フロイトという人がその理論でヒステリー患者を治したので、精神分析をすれば精神疾患は治せるとしたのです。

精神疾患の中でも神経症に有効ということになったのですが、ヒステリーと強迫性障害は症状から考えてもまったく違います。
心の奥のほうに抑圧している本当の問題が出てきたら、病気は治せるのでしょうか?
そんなことばかり言っていますが、強迫性障害PTSDの場合は逆に危険なことです。

神経症は全て同じように治せると考えるほうが無理なので、神経症という大雑把な病気の分類はなくなって、似通った病状の病気ごとに分類することになりました。
神経症がなくなったので、強迫神経症強迫性障害に改名されました。

強迫性障害は、不安障害の1つとされましたが、最新の国際的な分類(ICD-11)では、不安障害からも分離して、強迫症および関連症グループの代表になりました。
病名も強迫性障害から強迫症にとなっていますが、一般的には以前のままです。
ネット時代にそんなに簡単に病名は変えられません。

強迫性障害には、他の不安障害では見られないような特異な症状が出ますから、強迫性障害は、神経症でもないし、不安障害でもないし、精神病でもなく、独立した病気と考えるわけです。
今は心因性と内因性といった区別もほとんどなくなりました。

しかし、まだ問題はあって、強迫性障害といっても病状は様々で、性格や考え方の癖が原因の人もいれば、精神病様の妄想的な症状が出る人もいます。
今のようにどういうタイプの強迫性障害なのかを考えずに、強迫性障害にはこの治療をと言っても、それでみんなが治せるわけがありません。

そのタイプわけをするためには、強迫性障害についての正しい知識がいります。


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