強迫性障害の全貌

強迫性障害の知識の普及 Link Free

強迫観念と正常な思考の違い/精神障害者にとってのバリアフリー

本当のバリアフリーというは、精神障害への正しい知識がないと不可能です。
確かに強迫性障害は分かり難い面がありますが、ネット上の数々の間違った説明で余計に事実から離れた病気になってしまっています。

何度も書いていますが、強迫性障害は、無意味なことが止められない病気ではありません。
強迫観念は耐えられない不快な思考であり、それを解消しようとする行為が無意味に思えることはありません。

強迫観念は強迫的に(そう思いたくなくても)思い浮かびますが、正常な思考はそのストレスを解消しようとします。

何らかの小さい生き物が道で潰れていて、その近くを通ってしまった。

不安な思い→悪い病気か何かが伝染するかも。

正常思考→そんなことはないか(非現実的と考える)。→不安解消

強迫観念→悪い病気か何かが伝染すると思える。

正常思考→そんなことはないか(非現実的)と考える(場合もある)。→しかし強迫観念は消えない(現実に思える)。→洗浄などの強迫行為をする(現実問題とそれと結び付いている強迫観念が消える)。

このように現実に思えるからこそ、強迫行為をするのですから、強迫観念が非現実的な思考というのは間違いです。
現実検討力がありますから、非現実に思えることで、強迫行為をすることはありません。

不安な思い→悪い病気か何かが伝染するかも。

正常思考→そんなことはないか(非現実的)と考える。→しかし「非現実の不安な思い」は消えない(非現実の思いにとらわれる)。→現実に問題はないが「非現実の不安な思い」を解消しようと洗浄などの強迫行為をする(精神的に落ち着くことで「非現実の不安な思い」が消える)。

こういう場合は最初から最後まで精神だけの問題であり、実際の現実がどうかはほとんど関係なくなっています。

妄想の実体は、「非現実の思い」です。
何らかの不安などを非現実だと分かっていても、それにとらわれるのであれば、妄想が浮かんでいるということです。
現実検討力がある程度あれば、妄想でも非現実と分かるのです。

本当の妄想状態は、「非現実の思い」を現実そのものと思い込んでしまう状態ですから、非現実であることが分かってはいるが、それにとらわれるというのは、妄想が妄想(非現実)だと分かっている二重見当識での妄想状態です。

二重見当識での妄想と強迫観念の違いは、現実性の強さです。
二重見当識での妄想はあくまで非現実ですが、強迫観念は一般的ではなくても現実と結び付いている思考で、「ありえない」「そんなはずはない」と思えないからこそ、強迫行為をしてしまうのです。

幻覚妄想状態の時は、非現実にとらわれている状態で、頭の中だけの病気ですから、現実とか現実の他人はほとんど関係ありません。
精神病は、現実に関わらず精神症状が出る状態ですから、その症状は、現実への反応ではなく、幻覚妄想(非現実)への反応で出ます。

幻覚妄想状態が落ち着いてくると、それが非現実であることが分かり始めますが、それが思い浮かんでしまう限り、ある程度はとらわれてしまいます。

つまり、「ありえない」「そんなはずはない」と非現実だと分かっている強迫観念にとらわれて、強迫行為をしないといけないというのは、強迫症状に見えて妄想状態(強迫観念様妄想)なのです。

二重見当識での妄想と同じく、軽い妄想ではありますが、非現実にとらわれているという意味では、強迫観念ではなく、妄想なのです。

こういうタイプは、妄想型の強迫性障害として、他の強迫性障害とは分けて考えるか、もしくは、精神病そのものとして治療するべきなのですが、現状では、このタイプこそが普通の強迫症だとされているのです。

もし本当に、強迫観念が無意味で非現実的であれば、幻覚妄想のように薬で短期間で治せるのです。
実際の強迫観念はその真逆ですから、簡単には治せないのです。

強迫観念が現実的と言っても、それが自分だけの内にある思いであることは、当然、強迫症であれば本人が分かっています。
現実と結び付いているから、現実的という意味です。

例えば、トラウマ記憶の強迫的想起が、すでに過ぎたことで、頭の中だけの非現実性の思いに過ぎないと言えますでしょうか?
PTSDの人も、トラウマ記憶に対して、「ありえない」「そんなはずはない」と非現実には思えないからこそ、どうしてもPTSD症状が出るのです。
トラウマ記憶から回避しようとすることが無意味に思えたり、バカバカしいと思うこともありません。

それと同じ事で、強迫性障害は、頭の中だけの幻覚妄想(非現実)への反応ではなく、現実への反応で症状が出ます。
人によっては感覚過敏とかトラウマが重なって、一般的にはあり得ないような強迫観念も浮かび精神病のようにもなりますが、実際に現実性の強い症状なので、統合失調症のように頭の中だけの非現実の思考に惑わされるわけではなく、強迫観念にも現実にも苦しめられるため、人間的な生活は困難になります。

普通の精神障害であれば、入院療養ぐらいはできるのですが、汚染恐怖などのある人は、そういう患者としての能力もないので、入院生活が逆に強烈なストレスになって症状が悪化して、精神病に間違われる危険もあります。
統合失調症と違って無理に入院しても治せる薬もなく、まったく逆効果です。

別に恥ずかしがって病院に行かない人が多いのではなく、強迫性障害の人は、病的な雰囲気にも悪い方向で簡単に感化されてしまい、特に汚染や伝染恐怖があると、そういう場所に行くことが困難になってしまうのです。
この前の記事にも書きましたが、社会全般が強迫性障害バリアフリーにはなっていないので、せめて病院という場所は様々な精神障害の人も安心して通えるようにするべきなのですが、それができていないというだけです。

強迫性障害での強迫観念は、無意味ではありませんから、強迫行為をしなくても何も心配ないと思わせる治療も効きません。
強迫行為をする前に強迫観念が浮かぶのですから、その時点ですでに不快で耐えられない強迫観念という実害を受けているからです。
それはそんなに不快ではないというのは、一般人目線の他人事の考えであり、患者の事実とは異なります。

強迫行為というのは本来は、したくしすることではなく、できればしたくないのですが、強迫行為主体型であると、強迫行為をしなければならない気持ちが先にあり、それができないことで、強迫観念のような不満などが思い浮かびます。
これは主に完璧主義的なこだわりの強い人とか、強迫行為での安心感、安定感などを依存症的に求めてしまう人などです。

強迫行為主体型も強迫性障害ということにはなりますが、何度か書いたように、強迫観念主体型とは真逆の面がありますので、この区別も本当はしないといけないのです。

それをせずに強迫性障害の説明をすることは無理がありますが、そうするのであれば、本来的な形である強迫観念主体型のことを書くべきです。

誤解こそが一番のバリアになってしまうのです。


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