強迫性障害の全貌

強迫性障害の知識の普及 Link Free

なぜ強迫性障害を発症するのか

強迫性障害の発症時期は、多くの場合、思春期です。
子供から大人に急激に発達する時期であり、精神的には不安定になりやすい時期でもあり、自分/他人、男/女、良い/悪い、きたない/きれい、安全/危険といった物事の把握や分別意識も強くなります。

強迫性障害になりやすい人は、子供の頃から感受性が強く、感覚過敏であったり、いろいろな刺激に敏感な面があります。
子供の頃は、泣いたり怒ったりしやすかった人も、思春期になれば、それが子供っぽい恥ずかしいことだと思うようになり、ネガティヴな気持ちを内面に閉じ込めるようになります。
それは、怒りや憎しみを表に出して相手を攻撃したりできるほど、ストレス耐性が強くない(神経が太くない)ということでもあります。

それが内面で消化できれば良いのですが、ストレス耐性が強くなったわけではないので、内に向けた気持ちが、自分自身のストレスになり、心を痛めることになります。
心に残ったネガティヴな気持ちは、日常に現れる不快な刺激と結び付きます。
例えば、汚れと結び付いた場合、汚れが気になっている間、ずっと強い違和感を感じてナーバスになり、そのストレスで攻撃性が強くなり汚れを排除しようとします。

強迫性障害の特徴として、ネガティヴな感情やそれを伴う記憶などが時間が経っても消えずに残り続けてしまうというのがありますが、それも違和感や不安に弱いというストレス耐性の低さが関係しています。
些細なことでもトラウマになりやすい人もいます。

なんらかの強迫行為(汚れの場合、洗浄)で、一時的には安心できるとしても、思春期の頃に閉じ込めたネガティヴな気持ち、怒り、不安、後悔、満たされない思いなどは、それだけでは消化できずに、また日常にある不快な刺激と結び付きます。

つまり、思春期の頃に何らかのことで、強い怒りをぐっと堪えて心に閉じ込めたり、それを続けたり、長期間ストレスに耐えなければならない状況を経験した場合、子供の頃からストレス耐性の弱い人は、強迫性障害を発症しやすいのです。

必ずしも思春期の頃のネガティヴな思いが消化しきれていないということではなく、思春期の前後でもありえるし、その後から今現在のネガティヴな思いが消化できないことも重なっていくわけですが、思春期の頃に受けたショック(ダメージ)が一番強く残りやすく、それがその後の人生にもずっと影響してしまうのです。

強迫性障害の人は、思春期を過ぎてもそれほどストレス耐性も強くならずに、子供の頃のままなのですが、その状態でストレスの多い社会に出て行くので、心のダメージも大きくなり、程度によっては、心が病んで統合失調症のような精神分裂状態にもなりえます。

ただ、統合失調症のように妄想や幻聴でわけの分からない状態になってしまうわけではなく、あくまで心の病みが強迫観念を生み、心の一面(内面のみ)が統合失調状態になってしまうだけで、それは表にはほとんど表れませんし、少なくとも人前で支離滅裂な狂人になってしまうこともありません。
その心の病みは、妄想や幻聴ではなく、病んだ思い(強迫観念や妄想様観念、またはトラウマ記憶など)として認識できます。
突飛で非現実的な思いも心の中には現れるかもしれませんし、そのような思いは心の病みを重くしますが、強迫性障害の人の場合、それは現実と区別して認識できるので、表向きは、そのことで取り乱したりもしません。

そのように強迫性障害の人は、統合失調状態が重なっていることがありますが、強迫性障害を治すと統合失調症になってしまうという説は間違いだと思っています。
その場合の強迫性障害が治るということは、統合失調状態も同時に治ることを意味するからです。

つまり、強迫性障害を治すには、強迫症状だけでなく、心の病みも治さないといけないのです。
精神的ストレスが内臓に影響することはありますが、心の傷、心の病みで一番影響を受けるのは、脳です。
強迫性障害は、脳機能の障害でもあり、それは心の痛みと一体になっています。

その心の病みは、元々はストレス耐性の弱さなどが関係していますが、強迫性障害の人は、内面が子供の頃のまま大人として振舞っているようなもので、ストレスに強くなっているわけではありませんし、きたない/きれいといった物事の分別が感情や思いと強く結び付きすぎて、極端だったり、曖昧だったり、バランスよくできません。

そういった意味では、発達障害との関連も考えられるわけですが、強迫性障害といっても実は、いくつかのタイプがあって、軽症か重症かでも病状がかなり違います。

その辺りのことについて、次回以降に書こうと思います。