強迫性障害の全貌

強迫性障害の知識の普及 Link Free

強迫性障害と発達障害 其の二

発達障害は大人になれば、大人らしく発達して治る場合もあるようですが、未発達のまま大人になれば、子供のまま社会に出るようなものなので、社会適応し難かったり、心や脳にストレスがかかりやすいことも考えられます。

強迫性障害の全ての人に発達障害が関係しているかは分かりませんし、強迫性障害でも依存症傾向が強いタイプとか、軽症であれば、薬が効いたり、治しやすいということは考えられますが、発達障害の土台の上に強迫性障害ある場合は、発達障害的な脆さがある限りは、強迫性障害も治し難いのかもしれません。
強迫性障害発達障害が重なっていると、他人には理解不能な強迫観念があるとか、強迫性障害がやや変形することもあるようです。


前回の記事で、ADHD強迫性障害の関係を書きましたが、ADHDの特徴として、整理整頓が苦手というのもあります。
整理整頓や掃除ができる部屋のきれいな人というのは、精神的にも整っていて、まともな人が多いはずです。
子供の頃にだけそれができないというのは、それ程、問題ではなく、大人になってからもできないのであれば、発達障害とか精神障害が関係しているのではと考えられます。

汚染の強迫観念が強い人は、手とか自分の物などをよく洗いますが、それは精神的な障害の症状としての病的な洗浄であり、きれい好きとか、健康的な洗浄ではないのです。
部屋の中の物なども、すでに洗ってある物もあれば、洗ってない物もあり、それなりに汚いとか、きれいの区別があり、汚い物を触った手では、きれいな物を触れませんから、いちいち手を洗わないといけなくなったり、整理整頓や掃除などが手順良くスムーズに行うことができず、やる前からいろいろと考えて気が疲れて、整理整頓に取り掛かれなくなります。
拒絶と接触回避で、汚い物を直視できないとか、触れないということも多いので、トイレや浴室などの自然と積もって行く汚れも放置してしまい非常に汚くなりやすいのです。
そういう場所の汚物やカビを放置できる人は、その汚れには接触しなければ強迫観念が浮かばない(汚されない)からで、例えば、汚物やカビに手などのきれいな場所が接触すれば、強迫観念が浮かび、汚れた手は洗わないといけなくなります。

不潔恐怖と汚染恐怖は似たような強迫観念で、人によっては、汚れだけでなく、穢れ(精神的な汚れ)や、不正とか不道徳な物事、嫌悪を感じる物事なども含まれますが、汚染恐怖という場合は、その汚れが拡大、拡散、伝染して、きれいであるべき物や場所などが汚染されて行くことへの恐怖感が強いのです。

また、確認の強迫症状なども、不正確、間違い、などなどへの不安が強いことも関係していますから、本質的には不潔や汚染恐怖の不安と同じような強迫観念であり、強迫性障害の人は基本的にストレス耐性が低く、そういう刺激に敏感で弱いという面があり、ちょっとした違和感とか、大きな恐怖とかありますが、気になったり、頭の中に浮かぶと、その思い(強迫観念)自体からもショックやダメージを受けるので、トラウマのように頭の中に長く残ってしまいます。

特定の恐怖症であれば、例えば高所などを避ければ良いわけですが、強迫観念を起こす物事は日常にあるので、どこに行っても避けられず、強迫性障害は基本は頭の中の強迫観念の障害ですから、何もない場所に行っても、頭の中に考えたくもない思いたくもない、考えや思い(強迫観念)が浮かんで、その思いを頭の中で振り払おうとすること(強迫行為)が続いてしまいます。


部屋の中は、単に手を洗うように洗えば良いというわけにはいきませんので、頭を使います。
そのためADHD強迫性障害に限らず、精神障害の重い人にとって、整理整頓や掃除というのは、大変困難なことになります。
強迫性障害には、うつ病が併発しやすいのですが、その場合は、強迫症状だけでなく、うつ病的な億劫感とか、気力が出ないということも重なり、そもそも日頃の強迫行為や回避だけで心身疲れてしまい、掃除などに取り組める活力がありません。

強迫性障害の汚染恐怖の場合の汚れと、一般的な汚れの基準は全然違うし、強迫観念的な汚れは、本人しか分からない(本人にしか意識できない)汚れである場合が多いので、他の精神障害と違い、掃除などを代行してもらうということもできません。逆に汚されてしまうからです。

軽症で、身内とか親しい人なら触れ合えるという場合は、援助も受けやすいのですが、重症であると、義理人情とか、血の繋がりとか、友情とか、愛情よりも、汚染が怖くて、人間関係が維持できずに、どうしても孤独になります。
ただ、そういう場合は、トラウマによるPTSD的な症状とか、うつ病的な心の病みとか、愛着障害とか、そういったことが重なって、複雑な精神状態になっていることが考えられます。
本当は、好きな人や友達と遊んだりしたほうが元気になれるのですが、汚染の恐怖があると、そういう人付き合いもできなくなって、楽しむことができなくなり、心の病みも治し難くなります。

強迫性障害の人で重症化しやすいタイプに、発達障害が土台にあるとは限らないと思いますが、不安や恐怖などに弱いというストレス耐性が低さが関係して、心も病んだり、その他の精神障害が重なりやすいということでしょう。
強迫性障害のみで、そんなに心は病んでいないということでしたら、そこまでは重症には至らないはずです。