強迫性障害の全貌

強迫性障害の知識の普及 Link Free

汚染強迫症状

「汚れ」というのは、人間の思い、考えがなかったら誰にとっても存在しません。
人間が何かを汚れとして意識することで、そこに汚れがあり得るのです。
人間でもおそらく赤ちゃんは、汚れを知らないかもしれません。
もしかすると、本能的に汚れのような感覚は感じられるかもしれませんが。

ある程度の年齢になれば、何が汚れかは、はっきり分かるようになります。
それは強迫が思春期頃に発症しやすい原因の1つです。

通常であれば、「汚れ」には違和感や不快感などを伴います。
人には、それぞれの経験があり、考えがあり、何がどれぐらい不快なのか、違和感などへ耐性も個人差があります。

汚染の場合は、かもしれないというだけではなく、(本人としては)実際に汚れてしまっていることが多く、当然、直接汚いものを触ってしまえば、汚れて嫌だなぁという強迫観念が浮かびます。

汚染の強迫症状に関しては、多くの場合、実際に汚れはあって、それに過剰反応するわけで、汚れは現実として確かにあるのです。
そして、その感情で判断したこと(過剰反応の汚れの程度)と、その人の実際の状況(汚れの程度)は同一です。
普通の人は普通の感情や判断がありますが、それによって、その強迫性障害の人の感情、判断、実際の状況が変わることはありません。

その汚れは目には見えなく、普通の人なら気にならない程度の汚れも多いのですが、本人の頭の中では、汚れの程度やルートや汚れ具合を頭の中で視覚化していて、汚れている間は、ずっと、汚れてしまった嫌だなぁと強迫観念があり続け、早く洗いたいとなります。

汚い物に触れたか触れなかったか分からないけど、少し接触したような気がして、汚れたかもしれない、汚された気がする、という思いで、洗いたい時もあり、汚れていたらその部分から汚染が拡大してしまうので、きれいなものが触れなくなります。


そういうことの何が精神障害なのかと言うと、普通の人なら気にならない汚れ(本人にしか分からない汚れや、汚れたかどうかが確実でない汚れ)までを過剰に気にしていることです。

普通の人なら、そもそもその汚れを意識できなかったり、触れたかもしれないけど、まあいいかと思える汚れであることも本人は分かっていますが、自分にとっては大変な汚れなので、気にしないわけにはいきません。

汚れることでの不快感、嫌悪感の強さは、人それぞれですが、汚染型の強迫性障害だと汚れに対して、一般の人の何倍もの嫌悪感や拒絶反応が出ます。

なぜなら、強迫性障害の人は基本的に違和感や不安感に弱い(ストレス耐性が低く)、些細な刺激に対しても一般の人よりも不快感が強いからです。
強迫性連想や関連付けもあり、汚れに関連する過去のトラウマ的な記憶が関わっていることも考えられます。

記憶を全部なくしたり、赤ちゃんレベルの知能になれば、汚れ自体は消せても、それはそれで大変だし、そんなに汚くないと思えれば、そんなに気になりませんが、汚れる苦痛や恐怖が強過ぎて、それがどうしてもできない病気なのですから、治しようがありません。


強迫性障害で汚染恐怖のあると、飲食店なども利用できませんし、ディズニーランドみたいなテーマパークでも遊べませんし、映画館なども困難になり、人によっては、悪い文字や情報などでも汚染されるため、家にいてもテレビや雑誌さえ見れずに、幸せとは程遠い孤独な人生になります。

交通機関が利用できないとか、病院には入れないなどの重度の症状がある人は、当然、病院にはほとんどいません。
そういうタイプは、血圧測定や血液検査なども拒絶するので、いても研究や適切な治療が困難です。
強迫性障害には重症でも未受診の人が多いという説がありますが、重症だからこそ、汚染恐怖で病院に行ったり、入院したりもできないのです。

強迫性障害の適応薬も、依存症傾向の軽症の人には、ある程度は効くとしても、その薬の治験には病院に行けないレベルの重症患者は含まれていないのですから、重症患者とか本当の強迫性障害の人には、効かないとしても不思議ではありません。

SSRIは、うつ病とか不安障害には効きますから、そういう症状を軽症化することで、強迫症状も少しは改善できる可能性があり、強迫性障害でも薬物療法を受けることはお勧めします。
強迫症状が残る限りは、併発しているうつ病もなかなか治らないかもしれませんが、少しでも軽症化するために、焦らずに治療を続けましょう。