強迫性障害の全貌

強迫性障害の知識の普及 Link Free

複雑性PTSDと強迫性障害の関連性

複雑性PTSDの人は、PTSDに当てはまらないわけではないのに、複雑性PTSDという病名を取り分け作ったのはなぜでしょう。
それよりも、普通の人が傷付かないような些細なことがトラウマになって、PTSD症状が出る人もいるわけですから、そういう患者を守れないと意味がありません。
複雑性PTSDにもそういう人は含めませんから、そういう患者はトラウマという強迫観念が繰り返し浮かぶ強迫性障害の患者として診ることになります。
トラウマの記憶は、強迫観念になったり、強迫観念と重なりやすいのです。

PTSDというのはトラウマによる強迫的な苦しみが続くのですが、原因がトラウマのみなので、強迫性障害には含まれません。
強迫性障害は、強迫観念と強迫行為の病気です。
PTSDでは、頭の中でトラウマを振り払うとか、トラウマ関連の物事を回避するとか、強迫性障害と同じことをしますが、その他に目立った強迫行為がないので、PTSDとして扱います。
強迫観念としてトラウマがあると、トラウマを想起したり、トラウマ関連の物事に関わると、過剰に洗浄しないといけないとか、トラウマがあるから確認などが過剰になってしまうなどの強迫行為があり、その場合は、強迫性障害になります。

妄想や幻覚などでも強迫症状は出ますが、統合失調症の場合、強迫症状があるかというより、思考や行動の解体が見られるか(分裂症状があるか)で判断します。
通常は、妄想や幻覚があれば、思考や行動の解体に繋がりますから、妄想や幻覚があっても分裂症状がなく、強迫症状しかないというのはあまり考えられません。
強迫症状も異常に度が過ぎたり、妄想的な強迫観念があると、分裂症状や躁状態にも思えますが、強迫症状がメインであれば、強迫性障害として扱います。
統合失調症の薬は、統合失調症的な妄想などに効きますが、強迫性障害での妄想(妄想様観念)には効かないからです。

強迫性障害にはSSRIが効くことになっていますが、うつ病よりも大量に増やさないといけませんから、これは簡単なことではありません。
大昔の抗うつ薬よりも副作用が少ないのが、SSRIの良い所なのですが、増やすほど、その分、副作用も強くなり、増量に耐えられる丈夫な患者でないと難しいことなのです。

SSRIはセロト二ンを増やすことになっていますが、実際の抗うつ効果はそれよりも、抗コリン作用による賦活作用(交感神経を活発にするような作用)であったり、強迫性障害の場合は、抗コリン作用による認知力の低下という面が効果のように感じることがあり、軽症の人であれば、ある程度効いている感じが得られます。
しかし、抗コリン作用は体全体、特に粘膜系を乾燥させますので、乾燥が出やすい人は、副作用の辛さが上回ってしまい効果を感じられるほど増やせません。

強迫観念というのは、自分の意に反して浮かぶ性質があり、強迫観念をほっとくようにしようとか、気にしないようにしようとか、振り払わないで放置しようとか、何も考えないようにしようとか、そういう意に反して強迫観念(考えたくない嫌に思い)が浮かぶので、どうしようも治せません。
強迫症の人は、頭の中を無にしても、強迫観念だけは浮かんでしまうのです。

弱い強迫観念は嫌悪感や不快感も弱いので、時間が経つと自然となくなってるとか、放置できるかもしれませんが、通常の強迫観念は放置できることではなく、なんとかしてなくしたいとしか思えません。
なくしたいという気持ちがあってこそ強迫観念なので、強迫観念が浮かぶのに、それをしばらく放置するなどというのは、とてもできることではないし、できるのであれば、強迫観念というほどのものではないので、それは強迫性障害の治療というよりは、思い込みの強い人の治療でしかありません。

強迫性障害は、もうろくすれば、治ったようには思えます。逆に言うと、強迫症だと神経が緊張して認知力などが異常に高まっているのです。
リラックスできれば良いのですが、それができない病気なので、なかなか難しいし、不合理な強迫行為をする病気なので、その症状は社会の中でも役に立たないどころか、みんなの足手まといになります。

たまに間違えている人がいますが、社会的に役立つのは、強迫性パーソナリティー障害の傾向のある人です。
こういうタイプは、こだわりは強いのですが、回避が少ないのです。
社会の中でこだわりを突き通す力が役に立つわけです。

強迫性障害の場合、その症状をある程度弱めないと、何の役にも立ちません。
しかし我慢を続ければ、うつ症状が強くなりますから、社会から少し離れて、できるだけ個人や少人数で出来るようなことをすると良いでしょう。
周りを気にして、人に関わろうとする面があっても良いのですが、それを意識的に抑えて、遮断することもしないとリラックスできません。
強迫観念自体はなくなりませんし、強迫行為も続きますから、それでも生きられる道を探すしかありません。

もちろん孤立するのではなく、少しでも改善するためには、服薬を続け治療を続けることも大事です。
それも社会との繋がりではあるのです。