強迫行為主体型と強迫観念主体型

願望も自然と思い浮かぶことが多いのですが、できればそんなに思い浮かんでほしくないという場合もあります。
例えば、節約している人の買い物シーン、ダイエットしている人のおいしいものをいっぱい食べたい思い、禁酒している人のお酒への欲求イメージなど、好きなことは考えたくなくても思い浮かんでしまうもので、願望のような良いイメージ、楽しいイメージというのは、なんらかの目的で考えないようにしても、本当は考えたいこと、本当は求めていることなので、どうしても思い浮かんでしまうのです。

強迫観念は不快な内容なので、なんとしても振り払おうとするのですが、願望、欲求的イメージで恐怖や拒絶反応が出ることはありません。

依存症や摂食障害などでも強迫的という言葉が使われますが、強迫症での強迫的とは意味が違うのです。

依存症というのは、基本的に楽しいこととか、幸福感や興奮を感じるようなことを繰り返すことで、それが止められなくなってしまう状態です。
強迫症の場合は、何らかの嫌な思いを解消しようと、強迫行為をしますが、それは誰もが行うような特に楽しくもない日常的なことで、その行為をすることが目的なのではなく、嫌な思い(強迫観念)を抑えることが目的なので、依存症とは分けて扱われます。

強迫行為での安心感やしっくり感、すっきり感を求めて、強迫行為依存症のようになっている人もいますが、快楽を求めているわけではないので、依存症ではなく、強迫症に含めることになっています。
ただ、刺激に弱い人は、普通は不快にならないことを不快に思うだけでなく、普通は幸福感が得られないレベルのことで、満ち足りた安心感や幸せな感覚になってしまうことがあり、一般レベルの楽しさとは違うにしても、強迫性障害の何割かには、依存症に近い病状の人もいるわけです。

願望とか欲求的内容の思考が浮かびやすいというのは、普通の人でも当たり前のことですが、同じように、強迫観念が浮かぶというのもある程度は普通の人にも起こりえることです。

強迫観念は嫌悪、不安、恐怖などで、願望ではありませんが、誰しもがそういった思考により危険予測や危険回避を行っています。
生存するために本能的にそうなっているので、普通の人でも時にそれが過剰になったりはしますが、一般レベルよりも慢性的に過剰なのが強迫性障害の強迫観念です。

元々、神経過敏、感覚過敏のある人は、普通の人がストレスにならない些細なことでも不快な刺激になりますから、強迫観念も浮かびやすくなります。
こういうタイプの人にはある意味正常な反応なので治し難くなります。

強迫行為依存型の人は、依存症と同じように、行為を我慢できるようになればいいし、やりたくてやっている傾向が強いので、強迫行為を一時的に止めたり、強迫観念を放置したりということも、しようと思えば、それ程抵抗なくできる場合が多いので、治療しやすいのです。

ここでは、強迫行為依存型とか完璧主義型の強迫行為がある人を、強迫行為主体型と呼んでいます。
強迫性障害は、強迫行為が止められない病気なので、行為さえ我慢できるようになればいいという最近の行動療法などは、強迫行為主体型の人向けの治療です。

強迫行為主体型にも強迫観念はあるのですが、依存症の人が欲求していることを得られない時の不快な気持ちと同じで、強迫行為を行えないから強迫観念が生じるタイプです。
仕方なく強迫行為をするわけではなく、最初から強迫行為をしたいという気持ちが強いわけです。

強迫観念のイメージがはっきりとしていて、その観念への拒絶、嫌悪が強く、強迫行為をすることが億劫で、しなくて済むならしたくないと思っているタイプが、強迫観念主体型です。
したくないのにしなくてはいけない、明らかに時間の無駄なのに長時間かけないといけない、そういう不合理の強いタイプで、こちらが本来的な強迫性障害でもあります。

強迫行為主体型は強迫観念が弱く、強迫行為をすることの苦痛も弱いので、障害度も比較的軽い人が多いです。

強迫観念主体型であると、強迫観念が強く、強迫行為をすることの苦痛も強いので、重症の人に多いです。
抑うつ症状など重なって妄想的思考が強まると、一生治らないレベルにもなり得ます。

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