強迫性障害の全貌

強迫性障害の知識の普及 Link Free

強迫性障害と感作/曝露による悪化

強迫症状は強迫性障害だけでなくいろんな病気で起こり得るし、同じように見える強迫症状でも強迫行為主体型か強迫観念主体型かで、内容は違っています。

一般的な説明に出てくる強迫性障害は、強迫観念は非現実的であるから、強迫行為は現実問題の解消にはならないとか、強迫行為をするから強迫観念が浮かびやすいとか、森田療法などでは、強迫観念とは正反対の強い欲求があるから強迫観念が浮かぶなどとも言っています。
ですが、それらの考えは勘違いです。
「こうするべき(治せる)」に合わせて、理屈で「~であるから」と都合よく考えることで、実際の強迫性障害ではなくなってしまうのです。

そうすると強迫性障害は治しやすくはなりますが、そのほとんどは軽症段階の人とか強迫行為主体型の人であって、その範囲ではない本当の強迫性障害の人達は治し難いままになってしまいます。

強迫観念が現実的であったり、強迫行為をしなくても強迫観念が浮かびやすいとか、欲求がないのに強迫観念が浮かぶ人は、どういう病気だと言うのでしょうか?
それこそが強迫性障害なのです。

例えば、感覚過敏や神経過敏が原因での強迫症状は、強い欲求や願望の反動で強迫観念が浮かぶわけでもなく、ものの考え方や性格に関係なく強迫症状が出てしまいます。
気のせいで刺激に弱いのではなく、実際に刺激に弱いので、現実のストレスと結び付いている強迫観念(不快な考えやイメージなど)にも過敏に反応してしまい、ショックやダメージがなかなか消えてくれないので、強迫行為をするしかなくなってしまうのです。

強迫性障害の人のストレス耐性が極端に低いのは、感覚過敏や神経過敏によって交感神経が常に緊張した状態になっているからです。
感覚や神経の過敏による病気はいろいろありますが、そのほとんどは強迫性障害に含めることができます。
例えば、ミソフォニア(音嫌悪症)というのもあります。

音と言うのは、何らかの接触とか摩擦とか物理的な反発で起こりますから、不快な音には誰でも違和感を感じ、聴覚過敏の人はその傾向も強くなります。
強迫性障害の人であると、普通の聴覚過敏だけではなく、嫌なイメージが浮かぶ音に過敏になり、強い嫌悪反応が出ます。
音は空気の振動で伝わりますから、不快な会話に接触を感じて汚染されることがあっても強迫症としては不思議ではありません。
普通の人でも食事中に汚い話は避ける人がいます。感覚が過敏であると、そういう傾向が強まってしまうのです。

もちろん聴覚情報だけでなく、視覚情報にも過敏になり、視覚的に嫌なイメージが浮かぶこと(他人の不快な動作など)も嫌悪することになります。

そういうイメージは非現実の妄想ではなく、現実的なことであり、そのイメージに対する不快感も現実的ですから、そのイメージから不快感だけ取り除くということは不可能です。
生理的に不快を感じるイメージに無反応になったり、楽しく思えたりはできないのです。
普通の人であれば慣れることができても、神経過敏の人にはできません。
ですから、曝露とか反応妨害とか条件反射制御法とかの訓練的な治療も向いていません。

不快な刺激を避けるという正常なことが、一般的ではないレベルで起こるので、障害になりますが、刺激に過敏であると、刺激で起こる情動も過剰になってしまうのは、生物ととしては正しい反応なのです。

普通の人でも火を見れば、熱さが思い浮かびます。
では、火の写真を見て、それが熱い感じがするでしょうか?
する人もいるかもしれませんが、強迫症の人は、その火の写真から何らかの良からぬことを連想してしまいます。
人によっては、火という文字だけでも、それを連想してしまうのです。

火によって、火と関連付いている感覚や感情、記憶などが呼び起こされ強迫観念が浮かびます。
それが良いことであれば問題ないのですが、嫌なことであると、現実だけでなく、その写真や文字なども見れなくなります。
頭の中にそのイメージが浮かぶことも耐えれません。

これはPTSDの人が、トラウマ記憶の想起や、トラウマを想起する物事を避ける拒絶反応と同じです。

強迫性障害は、この強迫的な関連付き(関連強迫)に悩まされる病気です。
連想強迫などとも言えますが、何らかの刺激によって、それと結び付いている感覚や感情、記憶、イメージなどが呼び起こされるのです。
条件反射も関係しますが、条件反射は解除できるでしょうか?
何らかの刺激によって、(食べたいなどの)欲求を生じることなどであれば、緩和しやすいと考えられています。
恐怖、嫌悪、不安そういったことが生じる場合は、ほとんど無理です。
条件反射がというよりは、生理反応を変えられないからです。

例えば、おいしそうな食べ物を見て、食べたいと思う。これは、無条件反射(本能的反応)とも考えられますが、実際には無条件ではなく、おいしそうな食べ物を見るという条件下での反応ですから、ある意味ではこれも条件反射です。
よっぽどお腹が空いていないかぎりは、ある程度は我慢したり、抑制もできますが、お腹が空いた空腹感による苦痛は変えられません。
この苦痛は生理的反応で、そこで安心できてしまうと、体(命)が維持できなくなります。

熱い物を触ってしまい、とっさに手を離す。これは、「熱い」という痛みによって、痛いから頭で考えなくても自然と体がそういう動作を取ります。
頭で、熱くない、手を離すな、などと念じても、体がそうしません。
それができてしまうと危険だからです。生物の生存本能には逆らえません。

こういう反応は生物としては正常で、苦痛なことは特に考えなくても体が避けるようになります。
この反応が現実だけでなく、イメージや考えに対しても起こります。
それが強迫観念への反応で、強迫観念によって危険は回避されますが、神経の過敏によって、強迫症状が過剰に起こることで日常生活や社会での障害になります。

強迫観念のイメージ、これ自体が無意味であっても、それと不快な感情が結び付いている場合は、強迫観念もコントロールできません。
そのイメージが幸せな感情と結び付いていれば、それで強迫されることはありませんから、強迫観念にはなりません。
不快な感情が結び付いているから強迫観念なのであり、強迫観念から不快な感情を切り離すことはできません。

強迫観念には不快な生理反応が結び付いていますから、強迫観念から不快な感情を切り離すには、強迫観念自体を消さないとできません。

恐怖や嫌悪を感じなくする薬を使えば可能かもしれませんが、実際にはある程度は恐怖や嫌悪を感じられることで、身を守れる面があり、それは適度であれば、他人を守ることや社会性を維持することにも繋がります。
毛虫を素手でつかまえて、正常な恐怖も痛みも感じなくなければ、平気ではありますが、手が荒れて拒否反応が出て体が異常になります。

恐怖や嫌悪や不安と言うのは誰にでもありますが、それらの刺激に過敏であることで、強迫観念になり長々と残って消えなくなります。
普通の人でもトラウマ体験の想起を嫌がりますが、それは当然、トラウマ体験の苦痛や恐怖、嫌悪感なども想起されるからです。
現実の記憶を変えることはできませんので、トラウマも治し難いのですが、同じように現実反応での強迫観念は、それと関連する現実の記憶が消えない限りは続いてしまうのです。

トラウマ(PTSD)用の認知行動療法もトラウマ記憶はただの記憶であって現実ではないと思わせて、それには慣れましょうというやり方なので、トラウマを語れないレベルの人は、トラウマ用の認知行動療法も適応できません。
同じように避けていること、嫌悪していること、恐怖していること、こういうのを語れない、書き出せないレベルの人は、強迫性障害認知行動療法ができません。
例えば、強迫観念がトラウマと結び付いていたり、強迫観念主体型の人で、精神的汚染症状などにより、その強迫観念を語れないという場合は、治す方法がないのです。

認知行動療法に取り組めると言うことは、その時点で、ほとんど治っているような状態ですから、本当は治療がストレスになってしまうレベルの人をどのように治すかが治療なのです。
それは薬で可能ですが、麻薬や麻酔系になりますので、日常使用できません。

現在の(と言っても古い薬ですが)強迫性障害の薬は、恐怖や嫌悪はもちろんのこと、不安にもほとんど効きません。
今後、ほどほどに恐怖や嫌悪を感じなくする薬ができたとしても、それでも管理下でないと難しく、強迫症は慢性病ですから、日常使用ができなければ、意味がありません。

今までの強迫性障害では、強迫観念は、非現実的であり、その強迫行為も現実との結び付きがないと考えられていました。

これからの強迫症では、強迫観念は、現実的であり、その強迫行為も現実との結び付きが強いと考えるようになります。

強迫性障害という病気が分かってない人が多く、まだ何年も先になりますが、強迫性障害が正しく理解された上で、また新しく治療を見直すことになります。

現状では強迫性障害が強迫的なこと全般に弱い病気であることも知られていません。
なぜなら、強迫行為主体型の人はその逆だからです。
感覚や神経の過敏が関係ないと思われているのも、強迫行為主体型にはそうでない人も多いからです。

強迫行為主体型の人でしたら強迫(ストレス)に強いので認知行動療法なども向いていますが、強迫観念主体型の人は、強迫(ストレス)に弱いので、「こうしなければいけない」「こうするべき」という強引な治療方法には拒絶反応が出てしまいます。

「こうしなければ治せません」「こうするべきです」という強迫的な治療は、ストレスに慣れさせるのが目的ですが、当然、ストレス耐性の低い人には耐えられず、取り組むことができません。
強迫性障害はストレスで悪化しますから、そういう治療は受けてなくて正解なのです。

ベルが鳴って餌を与えられていた犬が、そのベルの音を聞いただけで唾液をたらす。
これが条件反射と言われます。
ベルの音がすると餌がもらえると思うのかは犬に聞かないと分かりませんが、ベルの音と餌に何らかの繋がりができるわけです。

今度は、しばらくの間、ベルの音だけを鳴らして、餌を与えないようにする。
そうすると、ベルの音を聞いても、唾液が出ない。
これが条件反射の消去だそうで、ベルの音がしても餌がもらえないことが分かったからかもしれませんが、ベルの音と餌の繋がりがなくなったわけです。

これが認知行動療法のヒントになっていると言われていますが、強迫性障害の治療とはほとんど関係ありません。
曝露反応妨害というのは強迫観念が現実的でないこと(強迫観念の苦痛と現実との繋がりがないこと)が条件であり、現実反応としての強迫観念は、強迫行為をしなくても現実のストレスと共に浮かびますから、強迫行為をしなくても苦痛はなくなりますよ、とはならないからです。

現実反応の強迫観念や現実のストレスも、普通の人とか気のせいで過敏になっている人などであれば、ストレスを少しずつ繰り返し体験することで慣らすこと(脱感作)ができますが、実際にストレス耐性が低い人には、それに慣れるということがほとんど不可能なのです。
逆に感作が起こって症状が悪化してしまいます。

元々から強迫症の人の日常は曝露の連続であって、曝露反応妨害と同じ事を我慢して長年続けてしまったことで、悪化して重症化した人が多いわけです。
強迫観念が繰り返される。これも曝露の連続です。強迫観念によって強迫観念が強まる。これは強迫行為を止める(ストレスを我慢する)ほど悪化しますが、社会の中では行為や回避を我慢するしかない状況が多くあるのが原因です。
そういう重症の人が曝露反応妨害などやっても余計に悪化するだけです。

ネットでは強迫性障害がどんな病気かも理解できずに治せる治せると言っている人も多いので注意してください。
そういう人は強迫性障害の多様性を知らずに言っているのです。
健康食品とか健康法と同じレベルで、全額自費のビジネスとしてやっている所もあり、そういう業者のステマ(間接的宣伝)も多いので注意してください。
自費でも治療を受けないといけないように思わせる暗示をかけているのですが、お金のかかることは、無理にやれとは誰も言えませんし、無理にやることでもありません。
無理強いされてやれば、逆に悪化して長引くことさえありますので、自分の身は自分で守らないといけません。
セルフ治療本などに書かれていることも、軽症範囲の人向けですから、本に書いてあるからと言って鵜呑みしてはいけません。
重症の人は、それとは別の病気と考えたほうが良いです。

ビジネスの人たちは、簡単な強迫性障害を作り出して、それが全てであるかのように説明しますが、実際には多種多様な病気であり、みんなが同じ方法で治せるわけがないのです。
頑張れば治せると言うのは、そういう軽症範囲の人達のことで、本当に強迫症の人はストレスに弱いので、頑張っても頑張らなくてもそれに関係なく些細なことが刺激になって強迫観念が浮かび、通常は治せません。

治療を受けてもどうしようにも何十年も重症のまま治せない人もいます。
同じ強迫性障害という病名でも、軽症なのか重症なのか、どういうタイプなのか、併存疾患は何かなどで全然違う病気にもなり、治し方も治せるかどうかも人それぞれです。
認知行動療法を受けるつもりの人は、「悪化する可能性はないか?」「トラウマにならないか?」と確認するようにしてください。
「悪化はしない」といわれたら、信頼できません。
悪化した場合、余計にどうしようもできなくなりますから、すぐに止めるべきですが、治療を受ける前に、そういうことをよく考えてください。
治療率とかは、治療を受けていない(受けられない)多くの人、途中でやめた人、悪化した人は含まれません。
軽症でなければ、実際にはほとんど治せないというのが現状ですが、一般的な説明に出てくるような強迫性障害の人もいるのは事実です。

強迫性障害というのは、子供でなけば、本来、自分自身が一番良く分かる病気であり、自覚できるそのままが強迫性障害の症状なのです。
治せるレベルの人でしたら、治せるということも自覚できるし、そうであれば実際に治せるのです。
逆に治せないレベルの人は、これは治せないと自覚できます。
そういう範囲の人は、治そうにも治りませんので工夫して生きるしかありません。


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